| きものの話あれこれ |
村田吉茂 |
1971年(昭和46年)10月「ミセス」掲載
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No.10 いい買い物をするために
自分のイメージを持つ
女のかたはその時の気分でふっと衝動的に買い物なさる傾向が強いようですが、何をどう買っても経済的に響かないというかた以外は、衝動買いは慎みたいですね。衝動的に買ったものでいつまでも飽きないなどという品物はめったにありません。特にきものはそうじゃないでしょうかー。
なにか一枚きものがほしいと思ったときは、それはどんなものでいつどこへ着て行き、予算はいくらという、ご自分なりのイメージを頭に描くことです。そのイメージをしっかり刻み込んでから、そのイメージに合ったものをさがすのです。わたしの存じ上げているある奥様は、買い物のときに前々から克明にメモしておいた手帳を持っておいでになり、実にてきぱきと短い時間に合理的な買い物をなさいます。けっして迷ったり衝動買いをなさいませんね。
さがしてもご自分のイメージに合ったものがなかったらいさぎよくあきらめます。しかたがないからと安易に妥協しないことです。妥協して買ったものは後悔して飽きがきます。わたしはその点徹底していて、自分でこうと決めたものは何年かかってもさがします。今愛用しているオーバーは三年かかってさがし求めた生地です。それを見つけるまでの三年間は古いオーバーでがまんしていました。そのかわり、そのような思いで手に入れたものはたいせつに何年でも着続けます。
きものも同じです。けっしてまにあわせや、行きあたりばったりで選んでいただきたくないですね。ご自分がしっかりしたイメージをお持ちのかたには、業者も協力してそのイメージどおりのものをいつかさがし出してくれるものです。ない物をそろえていく、そこに楽しみがあるのです。
しかし、ときには思いがけずいい物にぶつかる場合があります。今、さしあたって必要ではないけれど、とにかくすばらしい、こんな時、事情が許すのでしたら買っておくことをおすすめします。どんな品物も同じですが、いい物が再び現れるということはめったにないものですから。ただし、いい物という判断を人に言われたり、すすめられたりするのでなく、ご自分が判断なさるということがたいせつです。